とろける恋のヴィブラート
「奏、浮かない顔だね。もしかして、この前僕がバーで言った事……まだ怒ってる?」


「え? そ、そんなんじゃないです」


「じゃあ、何を考えていたの?」


 物腰柔らかな柴野の声音に、奏は複雑な想いに駆られた。


(どうして私、こんな時に御堂さんのことなんか考えてるんだろ……?)


「ごめんなさい、ぼーっとしちゃって……私、今夜は一人で帰ります」


「奏……」


「自分勝手でごめんなさい、少に頭を冷やし――っ!?」


 その時、強い力で腕を取られ、気がついたら奏は柴野の胸の中に引き込まれていた。
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