とろける恋のヴィブラート
「どうして? 僕たち、恋人だろう? なんでこんな事するんだ?」


 濡れた唇を拭いながら、柴野が切なげな視線で奏を見下ろした。


「恋人だからって、無理やりこんな……」


 柴野に口づけられた時、奏は柴野に対して恐怖を感じた。怒りのような感情が入り混ざったキスに、奏は耐えられなかった。


「ごめんなさい!」


「奏!」


(私……最低だ)


 柴野に触れられただけでぞわりと肌が粟立った。


 自分を最低な人間だと罵りながら、冷めゆく柴野への気持ちを認めざる得なかった。
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