とろける恋のヴィブラート
※ ※ ※

 会場には数百人を超える招待客が食事をしながら歓談をしていた。


(すごい人……)


 片山の知り合いなのか、全体的に裕福な雰囲気のある人ばかりだった。


 奏は、そんな大勢の招待客に圧倒され、ゴクリと喉を鳴らした。


「それでは、御堂様によるヴァイオリン演奏はこの歓談の時間の後になりますので、準備の方をお願いします」


「は、はい!」


(だ、だめだ……緊張してきた)


 司会者がスケジュール予定表を忙しなくめくる紙の音が耳の奥で響く。緊張で顔も身体も強張って、指先がどんどん冷たくなっていった。


「ったく……そんな顔してたら、せっかくのドレスも台無しだろ」


 緊張硬くなった身体にポンッと温かな手が肩に乗せられて、奏はビクリと肩を跳ねさせた。


「御堂さん……っ」


 自分のドレス姿を見定めるような御堂の視線に、奏の心臓がドキドキと反応する。
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