とろける恋のヴィブラート
 奏がアレンジしたステージは結婚式にふさわしく、あまり派手すぎずに清楚なイメージのステージだった。


 結婚式といえば純白、という定番を覆して、ペールブルーのブルースターという花を所々にあしらったのが杏子には好評だった。


「それでは御堂カイリさん、お願いします」


 司会者による御堂の紹介が終わると、ステージの中心で拍手に包まれ、一礼をした御堂が堂々とヴァイオリンを構えた。


 余興で演奏する曲は、杏子のリクエストを含んで二曲。


 G線上のアリアを御堂がソロで弾き、次に奏が伴奏する二重奏となっている。


「おぉ……」


「素敵……」


 御堂が旋律を奏でると、会場からざわめきが聞こえてきた。


(御堂さんのG線上のアリア……いつ聴いてもうっとりしちゃうな)


 胸が張り裂けそうな先程までの緊張が嘘のようだ。


 奏は、穏やかな気持ちで自分の伴奏の出番を待った――。
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