とろける恋のヴィブラート
 高校時代――。


「え~っとあの曲なんだけ……聴いたことある曲なんだけど」


 御堂がいつも音楽室で一番最初に弾く曲のタイトルを知りたくて、奏は図書室で放課後、一人でクラシックの楽譜を漁り散らしていた。


「う~、これじゃない、これでもないな……」


 楽譜を見て頭の中で音を再生するも、どれもこれも当てはまらない。


「♪~~♪~~」


 奏は楽譜を探しながら目を閉じ、鼻歌を歌って曲の形を再現した。


 その時――。
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