とろける恋のヴィブラート
「っ!?」


 その時、開けっ放しにしてしまっていた部屋の窓から、あの時と同じ春の風が流れてきて、奏の頬をすっと撫でると回想から意識が浮上した。


(そうだ!)


 奏は思い立ったように本棚から高校の卒業アルバムを取って、挟み込まれていた一枚の紙を開いた。


 その紙は、あの時、御堂に押し付けられた一枚の楽譜だった。


 譜面通りに曲を脳内再生すると、あの当時、御堂がよく音楽室で弾いていた“G線上のアリア”が心地よく頭の中で流れる。
< 57 / 458 >

この作品をシェア

pagetop