とろける恋のヴィブラート
(初恋の思い出なんかいいことなかったのに……時間が解決してくれるって思ってたのに)


 御堂の演奏を聴いたらきっとこんな気持ちになるとわかっていた。

 奏は御堂のヴァイオリンを記憶の底から掘り起こしてしまった事を後悔した。その卓越した演奏など、いまさらサンプルを聴かずともわかりきっている。


 御堂の得意とするヴィブラートの効いた演奏が、まるで封印を解かれたかのようにぐるぐると脳裏で巡っている。


 突然降りかかった神様の悪戯は、あまりにも突然で、そしてイタズラに奏の心をかき乱すのだった――。
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