とろける恋のヴィブラート
「はぁ……」


 ひと通り弾き終わると、名残惜しむように鍵盤から指を下ろして、奏は満足するように深呼吸した。


(いっけない! もうこんな時間)



 時間を確認すると、そろそろ帰る予定の時刻になろうとしていた。奏はクロスでさっと鍵盤を拭き、資料などをバッグにしまってホールを出ようとした。


 その時――。
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