瞳の中の碧い海



またドアが開くと同時に
彼の胸に飛び込む。



「なんでそんな
 切羽詰ってんの」




棗の低い声が
耳元で笑った。



間近で見る彼の顔は
いつもと何も
変わらずにきれい。



その薄い瞳の色に
吸い込まれてしまいそうだ。



玄関で靴を脱ぐのもそこそこに
激しいキスが始まる。


そのまま
ベッドに直行してしまう。




こんなのは多分

恋とは言わない。




体だけしか
求められていなくても
それでもいいと思えるなんて。



健ちゃんがママが
心配してくれているのは分かる



私が一緒にいる相手は
彼らから見て

あまりいい人では
ないだろうから。





< 113 / 377 >

この作品をシェア

pagetop