瞳の中の碧い海

―天使は札幌を迂回する―



翼(よく)の
11歳の誕生日を待たずに


パパは家を出て行った。


パパとママの間の
亀裂が埋まらないことくらい


一人っ子の翼には
全て分かっていたのだけど


でもまさか
パパが自分のことを
愛していないなんて

思ってもみなかった。


ママがこう、言っていた。

「パパは他の人と結婚するの。
 もう子供もいて
 他の子のパパになるのよ」


小さな胸は
押し潰されそうだった。
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