瞳の中の碧い海
電車に乗って
彼の部屋に着くと
棗は目を覚ましていた。
まだ不安が残っているのか
顔色が悪いような気がした。
「もうここには
来ないかと思った」
棗は私の顔を見るなり
そんな事を言った。
「ママが心配するから
一度帰っただけよ?
どうして?」
「目が覚めたら…
いなくなってたから」
「不安にさせちゃったね?
ごめんね?」
「やっぱり翼は
何か知ってるんだな」
「多分何も知らないわ…
そのうち話してくれるのを
待ってるよ」
棗はゆううつそうに
ソファに腰掛け
煙草に火を点けた。
私はただ黙って
隣に腰掛けた。