瞳の中の碧い海
自分の人生には
レールが引かれていることに
棗は早いうちから
気付いていた。
それに従わなければ
彼は存在する意味がない。
父親の跡継ぎとなるためだけに
ここの家に来た
子供だったから。
全てを諦めて
無気力に生きている
子供時代だった。
自分が他の子と
少し違うということも
かなり早いうちから
気が付いていた。
外国人の血が混ざっているのか
なんて
今まで何度
聞かれたか分からない。
両親のどちらにも
まるっきり似ていないことを
周囲の大人達は
分かっていながら
見て見ぬフリをしていた。
棗が
S大附属高校生になった時に
義母が病気で亡くなった。
彼はやっと
少しだけ自由を
手に入れた。
もう家の中で
意味もなく
暴力を振るう人は
いなくなった。
父親は再婚しなかったものの
方々に愛人がいるから
滅多に家には寄り付かない。