瞳の中の碧い海



店を出て
二人で手を繋いで
夜のすすきのを歩く。




「翼ママは理解あるし
   楽しくていいな」




彼は実の母親の顔を知らない。



育ての母の記憶は虐待のみ。



私にはその言葉が
「翼は幸せだ」と
言っているように聞こえる。



ママへの感謝の気持ちが
溢れてくる。



周りに
「不憫だ、可哀相だ」と
言われて


そうなのかなと
思っていたこともあったけど


実際は違う。


パパだってそうだ。


10歳までだったけど
その間たくさん
愛してくれていた。



それは幸せなことだったんだ。



ずっと胸に開いていた穴が
全て埋まってしまった。


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