瞳の中の碧い海
それに気が付いたのは
翼の11歳の誕生日。
いつもお誕生日には
プレゼントとケーキ
かかえきれない程の
花束をくれたパパ。
「愛してるよ。
翼はパパの宝物だからね」
毎年そう言ってくれていたのに
今年の誕生日はパパの姿も
バースデイカードすら
届かなかった。
ママとの関係は例え終わっても
いつまでも自分のパパでは
いてくれると思っていたのに。
押し潰れそうな胸に
耐え切れなくなって
もう夜だけど
家を飛び出した。
家から10分ほど歩いた
駅前の通り沿いに、
そこそこ栄えている
繁華街がある。
そこの往来に立って
行き過ぎるサラリーマンの中に
パパの姿を探した。
きっと
仕事で遅くなっているんだ。
そう思いたかった。