瞳の中の碧い海


夜中の1時が過ぎて
人気がまばらになってきても


そこにパパの姿を
見つけることは
出来なかった。


その後まもなく翼は
おまわりさんに
保護されることになる。


大人が迎えに来ないと
翼はここから
帰してもらえない。


ママは離婚してから
翼を育てるため
水商売を始めていたので
家にはいない。


翼を迎えに来たのは
隣の家のおばさんだった。


おばさんは翼を抱いて


「寂しかったでしょう?
      可哀相に」


と言ってくれた。


隣の家の子
幼なじみの健ちゃんも
起きてきて
翼の頭をなでてくれた。


「どうしたの翼
 どうして駅なんかに
     行ったの?」


健ちゃんが
不思議そうな顔で翼に聞いた。


「パパが来るかと思ったの。
    …でも来なかった」



おまわりさんに聞かれても
何も言えなかった翼が
彼だけに本音をもらした。

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