瞳の中の碧い海


坂を下って彼の車は
国道5号線を
札幌とは逆方向に走っていく。


小樽は海沿いの町なので
海なんて
坂さえ下ってしまえば
すぐなのに

どこへ行くのだろう?


車内では特に会話もなく
この人が何を考えているかも
分からないままだった。


「早坂さん…
  ていうんですよね?」


恐る恐る話しかけてみた。


「そう」


「早坂さんて
 お呼びすればいいですか?」


「『なつめ』でいいよ」


「なつめ?」






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