瞳の中の碧い海
駐車場に車を停めると
そこからは歩いて
岬の先端まで行けるよう
遊歩道が続いている。
「さあ、お姫様どうぞ」
棗は左手を私の前に差し出し
また心からではない
作り笑顔でそう言った。
ホントに変な人だな
と思いながらも
その笑顔の美しさに思わず
手のひらを預けてしまう。
さっき初めて話した男の人と
手を繋ぎながら歩いていく。
特に会話はなくて
心から楽しいとは言えない。
ただ繋いだその手まで
白く細長くて
爪の形までとてもきれい。
薬指に
シルバーの指輪をしているのが
気になった。
きっと彼女がいるんだろう。