瞳の中の碧い海



「Yesです。
 さっきの答え」


少し驚いたように
棗がこちらを見る。


彼がまた
ゆっくり距離を詰めてきたのは
分かっていたけど


この景色と
贅沢なくらい輝く
夕陽をバックに


こんな美しい人に
詰め寄られて


拒否できる人がいたら
お目にかかりたいくらいだ。



ついさっき
初めて話した人に
生まれて初めての


キスをされている。


メントールの
煙草の匂いがする。



他人の唇って
温かいんだな
と思った。



太陽が
水平線に引っかかっていて


もうすぐ陽が暮れてしまう。




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