瞳の中の碧い海



充分時間をかけてから
体の中にそろそろと
何かが入ってくる感触。


耳元で

「痛くない?」

 と低い声がする。



不思議と

あまり痛いとは
思わなかった。


上手く声にはならずに
小さく
うんうんと頷いただけだった。



唇を蓋がれて
舌が柔らかく入ってくる。




初めて他人と
ひとつになった。




それも今日初めて話した人


どんな人かも
まだよく知らない。


好きになった
わけじゃないし


向こうも多分
私が好きなわけじゃない。


それでも生まれて初めて


独りじゃないという
安堵感があった。




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