ブラックレター~高嶺の花に恋します~




近くにあったクッションを抱え込むその姿は絵になる。

美人は何をやっても可愛いからずるい。


そんな絢子の姿を私はベッドの上で横たわりながら見ていた。


座ることすら放棄した私に絢子が小さく溜め息を吐く。

座っているのも疲れるんだよ、絢子ちゃん。


そして横になったまま枕を抱え、私は昨日初めて知ったその人の名前を口にした。




「…相沢、総一郎…」




ドキン、と。

名前を口にしただけで胸が苦しくなる。


相沢総一郎。


ドラマのエンディングロールを見て初めて知ったその名前。


なんで今まで知らなかったんだろうと後悔したが、知ってしまったらその名前は私の頭から離れなくなってしまった。




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