ブラックレター~高嶺の花に恋します~
「…なんなの、これは」
じっと二人で黒い封筒を見つめること数十分。
何とも言えない重苦しい静寂を破ったのは絢子のその言葉だった。
顔を見てみれば、珍しく若干強張っている絢子の表情。
不気味に思っているのか、それとも不審に思っているのか。
そこまでは読み取れない。
どちらもかもしれないけど。
でも恐らく私の顔も強張っているに違いない。
何となく顔が痛いからわかる。
ただ私の場合、少しの緊張のせいでもあるのだけれど。
この手紙を見たときの緊張が戻ってきている。
その名前を見たときの緊張が。
それにしても絢子の言葉はもっともだ。
きっと彼女もそれ以外に言える言葉はなかったのだろう。
「…わ、わかんない…」