ブラックレター~高嶺の花に恋します~
触れた自分の名前が少しだけ特別に感じたのは気のせいだろうか。
「…来た、か…」
そう呟いて手の中にあるブラックレターをしっかりと見つめた。
逸らすことなく真っ直ぐに。
封を切るために添えた手が少しだけ震えていて。
思わず苦笑が漏れた。
珍しく、ドキドキしている。まるで学生の時のような気分。
(…俺も、年だな)
手紙一枚でこんな気分になるなんて。
例えるなら告白の返事を待っているときのような。そんな感じ。
(変な話だよな)
好かれていることは今までの手紙で十分わかっているのに。
それなのにそんな気分になるなんて。
わかっていてもドキドキするのはきっと問いかけた内容のせい。
初めて彼女に対して書いた手紙。