ブラックレター~高嶺の花に恋します~
どんなふうに笑うのか近くで見てみたい。
どんな声でどんな話をするのか、この耳で確かめてみたい。
どんな目で、どんな表情でこの人は人を愛すのだろう。
この人に愛される人が羨ましいと本気でそう思ってしまった。
それはもう、憧れと呼べるほど綺麗な感情ではなくて。
でも私には向こうの世界に飛び込む勇気はない。
もうどうしたらいいのかわからなかった。
眠れなくなるくらい混乱してしまっていたのだ。
一人では抱えきれなかった想い。
だから絢子に素直に話した。
一番信用のおける彼女に。
そんな彼女に引かれたら、私はどうしたらいいのだろう。
そんな思いから思わず俯いてしまう私。
震える手が、止まらない。