ブラックレター~高嶺の花に恋します~
「…そんな泣きそうにならないの。大丈夫だから」
そんな不安定な私に降ってきたのは、絢子の優しい声。
小さな頃から変わらない、お姉さんのような絢子の声だった。
そっと顔を上げれば優しく微笑んだ彼女と目が合う。
「普段何にも興味を示さないあんたが、誰かに興味を持つってことのほうが珍しいんだから。引いたりしないよ。むしろちょっと嬉しい」
いつだって一人の世界に閉じこもってるあんたが見つけた外の光でしょう?
そう言って柔らかく笑った絢子に、私はしっかりと頷いた。
そうだ。彼は私が見つけた光。
色褪せた世界に見つけた鮮やかな色彩の絵の具。
「あんたの世界、広がるといいね」
「…ありがと、絢子」