ブラックレター~高嶺の花に恋します~
私の恋の仕方はとても後ろ向きだ。
自分でもそう理解している。
好きな人のことになると知るのが途端に怖くなるのだ。
そんな臆病者の私は、絢子にカミングアウトしたあの日から一歩も踏み出すことが出来ずにいた。
調べればあの人のことを知ることは出来る。
現代社会にはその方法がたくさんあるのだから。
だけど私にはそれが出来なかった。
(怖いん、だよね…)
ただただ、怖いのだ。新しくあの人のことを知るのが。
憧れなら調べることはいくらでも出来た。
でも好きだから。
知れば知るほど遠くなる気がして。
違う世界の人なのだとその距離を思い知らされるのが怖くて。
きっとそんな病んだ恋の仕方をする私を見越してきたのだろう。