ブラックレター~高嶺の花に恋します~
「……」
一人きりの自分の部屋。
そこには静かすぎる空気が流れていた。
あの映画を観てから三日が過ぎ、すでに四日目を迎えようとしている。
つまり私があの人に引き込まれ好きだと認識してから、早一週間が経とうとしていた。
というかまだ一週間しか経っていない。
それなのに手紙を書こうなんて、そもそも早すぎるのではないか。
みんなこんなにも早く手紙を書いているものなのか。
そう思いながら、私は今日も黒いペンを片手に無地の白い便箋と向き合うのだった。
しかし何かを書こうとするたびに頭を過るあの人の姿に、私はペンを置く。
もうその作業を何日も何度も繰り返していた。
あの人の姿が思い浮かぶたび、私は間違いなくどんどんと文字が書けなくなっている。