ブラックレター~高嶺の花に恋します~
「こら旭!お姉ちゃんに向かってそういうこと言わないの!でも真麻…本当にどうしたの?」
そんな弟を叱り飛ばしながらもお父さんと同じように心配そうな顔でこちらを見ているお母さん。
言葉こそ柔らかいが内心はみんなと同じことを思っているんだろう。
私にはわかる。
絶対にここにいる私以外の全員が同じことを思っている。
"こいつ、何言ってるんだ"と。
それぞれ思う心の形だけは違うにせよ絶対同じはずだ。
だけど答える言葉は一つしかない。
「どうもしてない。私、この人と結婚したい」
ただ、それだけなのだ。
カランと誰かの箸の落ちる音がして、家族一同が呆然となった。そんな日。