ブラックレター~高嶺の花に恋します~




そして再び便箋と向き合う。

ペンに伸ばす手。


だけど




(…なんて書こう…)




やっぱり、どう頑張っても書ける言葉が見つからない。


別に何も思っていないわけではないのだ。

むしろその逆。思っていることは本当にたくさんある。


まだ数本しか見ていないけど、彼の演技力は本当に凄いと思う。

特に目の演技が。


笑ったときと真剣なときの瞳の差は言葉に表しがたい。

この人にまっすぐに見つめられたら倒れてしまうんだろうなとさえ思った。

すべて見透かされてしまいそうだと思った。


絢子に言わせると顔はそこそこだと言われたが、私からしてみれば相当格好いい。

少なくとも私が出会ったなかではダントツで格好いい。

特に笑った顔が。


私はその笑った顔にやられた人間だ。




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