紅 き 瞳





「………ん」



小鳥の可愛らしい歌声が、私を光の世界へと連れ戻した。


体が思うように動かない。


なぜなら、見覚えの無い毛布が体を締め付けていたのだから……。



見渡すと、そこは全く知らない部屋。


白を基調とした自分の部屋ではなく、ベッド以外何も無い部屋。








「……ここ、どこ?」




アパートの古臭い匂いに混じって匂ってくるのは、自分とは違う香水の香り。



その匂いが、自分は1人でここにいたんじゃないって事を、証明してくれた。



体にグルグルと巻きついている毛布を剥ぎ取る。



仕事用のスーツは、着ていたせいで何本もの線が強くついていた。



――――ギシッ



重みでしなるベッドから降りると、急に足元が不安定になってしゃがみ込んだ。



ふらふらとなる頭………。


二日酔いの時のような症状に戸惑いを覚える。




お酒なんて飲んでないのに………。




それに何だか……頭が痛い。






< 29 / 98 >

この作品をシェア

pagetop