紅 き 瞳
サンサンと降り注ぐ太陽の光。
暑さに顔を歪ませながら通り過ぎていく人々。
俺は今、都会の不動産屋の前に立っている。
周りに“募集中”の紙が張られたそこは狭く、人がやっと5人入れるほどだった。
真昼間から出歩くなんてことはしたくない。
肌がヒリヒリ痛むし、眠たいし………。
だけど、これも全て新しい住みかを探すためだ。
一歩前に出ると、冷気が体を掠めた。
すぐに視界に入ってくる化粧で塗り固めた女。
どんな部屋がいいのか単刀直入でいうと、そそくさと店の奥に行って
分厚いファイルを抱えてきた。
そして、それをパラパラと捲りながら顔色を伺う。
「これなんかどうですかねぇ?」
やけに甘ったるい女の声は、頭の芯まで響く。
ここの不動産屋は常連なのだが、いつもいつもこの女は………。
自分でいうのもなんだが、俺の顔はそこそこいいらしい。
それで得した事といえば………特にない。
俺は あからさまに嫌そうな顔をしながら不動産屋を出ていった。