紅 き 瞳
そっと気配を消して女に近付いていく。
バンパイアの能力を使えば、ターゲットに気付かれずに近づく事なんて、容易い事だ。
風のようなスピードでターゲットの女に近づき、真後ろに回った。
女は、ここでようやく俺に気付いたらしく、こっちを見るなり、脅えた目をし、小刻みに震えだした。
その目……、その目だ。
その目を見た瞬間、俺のバンパイアとしての本能が高ぶり ゾクッと背中に何かが走った。
抑えきれない何かが、体の底から湧き上がる感じ……。
何回経験しても飽きる事のない、この感情。
俺の異変を察知した女は、小さく後ずさりをはじめ、なんとか逃げようとしている。
そんな瞳で俺を見るな。
俺から、逃げようとするな……。
去るものを追う……そんな野生の心理のせいか、俺は堪えきれなくなりバンパイアの力を解放した。