紅 き 瞳
それから暫く経って、馬車はようやく停まった。
馬車から一歩足を踏み出すと、凍てつく様な殺気が体中を取り巻く。
これは……、悪魔の物か?
吐き気を催すようなそれを感じるのは、俺だけではない様だ。
「ナイト様……、如何致しましょう?」
「放っておけ」
「はい」
目の前に聳え立つ屋敷は、生まれた時から見てきたものだが、戦いの最中多くの傷を負ったようだ。
ぼんやりと浮ぶ松明は、アメジストのように輝く。
「ナオ……、行くぞ」
「はい」
呼吸を整え、屋敷に一歩踏み出すと、そこは外の世界とはかけ離れた世界だった。
幻で出来た植物に、綺麗な華。
一瞬、幻である事を忘れさせられてしまいそうになる程に……。