紅 き 瞳
扉の向こうでは、たくさんの同族たちがダンスを楽しんでいた。
煌びやかなドレスに身を包んだ女達は、一斉に俺を見るなり目の色を変え始める。
その他の、高い位の者たちも媚を売ろうとワイン片手に近づいてきた。
「おぉ……ナイト様だ」
「ナイト様がいらっしゃったわ」
「あぁ、なんて気高くお美しいのでしょう」
聞こえないように話しているつもりなのだろうが、内容は全て筒抜けになっている。
「ほら、エマ……ご挨拶してきなさい」
「キャメル…あなた、ナイト様に気に入られるように…」
娘に必死になって言い聞かせる母親の姿に、笑みさえ零れて来そうだ。
酔っているのか、ふらふらと近づいてくる女達を一瞥して、薄い笑みを浮かべると
進んでいた足は一気に止まり固まってしまった。
「ナイト様、レイ様にごあいさつを……」
「わかっている」
中心にひかれた紅いカーペットの向こう側には、何年もあっていない父親がいる。
一歩踏み出すごとに、周りの者は左右へと別れ道が出来る。
そしてとうとう……、親父が目の前に現れた。