友影
帰り道。


「なぁーんか、まだ3年生になったっていう実感がわかねぇな」

椿が背伸びしながらぼやく。

「そうね。私もまだ実感わかないわ」

椿と肩を並べて歩く桜が答えた。

「でもさぁ、これからいろいろ大変になってくるよね。勉強とか、進路とか・・・」

二人の会話に続けて私は先のことを想像しながら言った。

「だよなぁー。あーあ、1年生にもどりてぇ」

椿が嘆く。

私たちの帰り道の先に、胸元に赤いリボンをつけた女生徒たちが桜の木をケータイで撮っていた。赤いリボンをつけているということは、あのこたちは1年生だ。花園女子高等学校のリボンの色は、3種類。1年生が赤で、2年生が青。そして3年生が黄色である。私たちの胸元にも、黄色いリボンが結ばれている。

「赤いリボンつけて登校すればいいじゃない」

「マジでそうしよっかな」


「・・・・ホンキでやるの?」

「ジョーダンだよ」

桜と椿の会話を後ろで聞いてると、私は違和感に気付いた。

「・・・あれ、楓がいない」

隣にいるはずの楓が、いつのまにかいなくなっていた。

「おいおい、どこにいったんだ?」

辺りを見回すと、楓は先程の1年生の子達に混じって、桜の木をケータイで撮っていた。

「・・・相変わらずね、楓は。私も撮ろうかしら」

桜が呆れたようなため息をつき、ポケットからケータイを取り出した。

「お、いいね。じゃー俺も」

椿もケータイをとりだし、桜の木を撮影しはじめた。

「いいのとれた?」

先程からケータイをカシャカシャと音を連発している楓に私は話しかけた。

「ぜんぜん」

楓は短く言ったあと、またカシャカシャ撮影しはじめた。いつまでとっているのだろうか。1年生たちはもう帰っていったのに。

「そろそろ、電車くる時間じゃない?」

「あ、ホントだ。桜、あの二人置いてうちらだけ先に行こうぜー」

前方にいた二人が、そそくさと駆け出した。

「え、ちょっと待ってよ!楓、置いていかれるよ!ほら早く!」

「えーまだ納得のいく写真が・・・」

「明日もまた撮れるでしょ」

渋る楓の手を引っ張り、二人を追いかける。
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