あなたが好きで…
序章
序章
「あなたが好きです……」
少女は、絞り出すように言葉を紡いだ。
暖かな風が髪を撫で、赤く火照った頬をくすぐる。運ばれた緑の匂いが全身を通り過ぎる。優しい陽の光が、心を包み込んでいく。
普段人が寄り付かない学校の中庭は、今は2人だけの空間だった。
新井澪は、人生で初めての、愛の告白をした。
それはとても怖くて、切なくて……。でも、絶対にしまっていてはいけない想いだった。
「……っ!」
ふ、と。怖くなって、強く目を閉じる。今すぐにでも逃げ出してしまいたい。
沈黙の時間。
澪は、うるさいくらいの自分の鼓動に耳を塞ぎたかった。
え…?
瞬間、頬に何かが触れた。風ではない事はすぐにわかる。では何が?澪は目を開く。
そこには、こちらをまっすぐ見つめる彼の顔があった。相変わらず表情は読めないけれど、優しい眼差しが澪の瞳を見据えている。
温かい手……。
澪はそっと目を閉じて、その温もりに身を委ねる。鼓動は、今は落ち着いていた。緩やかなビートを刻んで、とても心地よい。
「澪」
自分の名前。聞きたかった声。欲しかった温もり。
ああ。私の好きな人。
衣擦れの音がする。彼の手が頬に添えたまま、撫でるように動く。
キス…されるんだ。
鼓動がまた踊り出す。彼と同じリズムを刻んでいればいいのに。
そう思った。
「あなたが好きです……」
少女は、絞り出すように言葉を紡いだ。
暖かな風が髪を撫で、赤く火照った頬をくすぐる。運ばれた緑の匂いが全身を通り過ぎる。優しい陽の光が、心を包み込んでいく。
普段人が寄り付かない学校の中庭は、今は2人だけの空間だった。
新井澪は、人生で初めての、愛の告白をした。
それはとても怖くて、切なくて……。でも、絶対にしまっていてはいけない想いだった。
「……っ!」
ふ、と。怖くなって、強く目を閉じる。今すぐにでも逃げ出してしまいたい。
沈黙の時間。
澪は、うるさいくらいの自分の鼓動に耳を塞ぎたかった。
え…?
瞬間、頬に何かが触れた。風ではない事はすぐにわかる。では何が?澪は目を開く。
そこには、こちらをまっすぐ見つめる彼の顔があった。相変わらず表情は読めないけれど、優しい眼差しが澪の瞳を見据えている。
温かい手……。
澪はそっと目を閉じて、その温もりに身を委ねる。鼓動は、今は落ち着いていた。緩やかなビートを刻んで、とても心地よい。
「澪」
自分の名前。聞きたかった声。欲しかった温もり。
ああ。私の好きな人。
衣擦れの音がする。彼の手が頬に添えたまま、撫でるように動く。
キス…されるんだ。
鼓動がまた踊り出す。彼と同じリズムを刻んでいればいいのに。
そう思った。