オオカミが来た!
貴一と一緒に塾の春期講習を受けた帰り、貴一は私の家に上がり込んだ。いつものこと、一緒に宿題をしたいと。
母はパートに出かけているから留守。帰り道にあるコンビニでお菓子と飲み物を買って、リビングのローテーブルに宿題とお菓子を広げて。
いつものように一時間ほど。集中力が切れかかった頃、貴一が両手を挙げて大あくび。
「ちょっと、休憩ぃーっと」
そのまま、ぱたりと倒れ込む。
いつもなら、すぐに起き上がってくるのに起きる素振りもない。静かになったテーブルの向こうを覗いた。
「寝たの?」
「いや、寝てない」
「目つぶってたら寝ちゃうよ?」
「いい、マジで眠いから」
「食べたら眠くなるなんて、お子様だね」
「ちゃう、春眠暁を覚えず」
「ああ、春だから……」
と言いながら、リビングの壁に掛けてあるカレンダーへと目を向けた。
今日は四月一日。