オオカミが来た!
「俺も、だよ」
いつもより低くて、怒ってるような声で貴一は言った。ゆったりと、体を起こしながら。
「え? 何が?」
さりげなく目を逸らす。
大きく息を吐くのが聴こえた。
なんとなく、気まずい。
「俺が、狼狽えるわけないだろ?」
体を起こした貴一が、テーブルに頬杖をつく。身を乗り出して、にこりと笑ったのが視界の端に映ってる。
「何言ってんの? 思いきり狼狽えてたくせに」
「バカ、美咲に合わせてやったんだろ? わからないかなあ……」
言い返したら、負けじと反論してくる。
あんなに驚いて、顔を真っ赤にしてたのに今さら言い訳するつもり?
「わからないよ、あんなに驚いてたのに何を言い訳してるの?」
笑い飛ばしたけど、何か妙な空気になっていく。