セレクトショップ・ヘブン
大きな桜の木が私をむかえる

「ただいま」

そう言って優しくだきつく

それからどれくらいしてからだろう

「おい!!」

突然呼ばれたからなのか落ち着いていた心がとびはねる

「昨日ぶりだね」

「……おぅ」

ぎこちなく笑いあう

「てかな!!桜の木のある公園なんか山ほどあるっつーの」

「うん。だけどこうだいくんならココに来るってわかってたから」

「どういう意味だよ?」

「私ずーとこうだいの事見てたよ。小さい時よく家族でココに来てて、花も咲かないこの木を大好きって言ってくれた、中学生になってもよく来てくれてた。最後に来てくれた時は泣いてたね。私は何も出来なくて……ただ見ていることしか出来なかった」

「お前何者なんだよ?」

「…………私こうだいくんのカフェ行きたかった。でも行けそうにないやっ」

「…………」

「ちゃんとカフェ開いてね」

「は?そんな金ないから」

「あるよ。お母さんの部屋にこうだいくんの為の通帳があったの、それにお父さんも毎月こうだいくんの為に積み立てしてるよ」

「…………」

「こうだいくんもバイト代ずーと貯金してるんでしょ?」

「うるせーよ」

「ねぇカフェにはさこの木も使ってよ」

「は?無理だろ公園の木だぞ」

「安心して。この木もうすぐ切られちゃうから……だからこうだいくんに使ってほしいの」

「お前マジで何者なんだよ」

「……こうだいくんに恩返しに来たんだよ」

「恩返し?」

「うん。だけどね、恩返しに来たこの10日間が一番幸せだった」

「……」

「私ねこうだいくんと一緒にいるとドキドキしてねなんか胸が苦しくなるの。理由はわからないけど、それがとってもとっても心地よかったの」

「お前それって」

「ねぇ約束して」

「え?」

「絶対カフェの店開くってこの木を使うって」

「あっあぁ約束な」

(感じるもうすぐ私は……)

「こうだいくん私が花も咲かせなくて町の人に切られそうになったときさっ」

「お前人間だろなに言って」

「助けてくれてありがとう」

強い風がふいた

私は木に戻っていた

(こうだいくんが私を呼んでる。あっはじめて名前呼んでくれた)

「桜!!さくらー!!」

(お願い上を向いて笑って。貴方が幸せになればそれでいいから)

そう願った瞬間桜が咲いた

花の芽もなかったのに

まだ咲く時期でもないのに

こうだいくんの所へふりそそいでいる

こうだいくんは上を見上げる

「桜?」

(こうだいくん……泣かないで)

こうだいくんは泣いてた。

でもね薄れゆく意識の中で最後にみたこうだいくんは精一杯笑って見せてくれてたからそれでもういいんだ……
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