リフレイン
・・・・出勤からやっと1時間経った夜6時
接客に追われていた本多聞マネージャーと私が落ち合えたのは
従業員用のお茶ポットの前だった。
「本多聞マネージャー、お疲れ様です」
「おぉっ!細井さんお疲れ様
今日は本当に来てくれてありがとう、助かったよ」
頭を下げながら私に握手を求めてくる本多聞マネージャー。
「いえいえ、本多聞マネージャーにはいつもお世話になってますから。
せめてもの恩返しですよ!!」
私のこの言葉に本多聞マネージャーはがばっと顔を上げ、
握手をしていない方の手で目を擦りながら嘘泣きをした。
「……ぐすっ………本当にいい子を雇ったな……俺は………ぐすっ…」
「本多聞マネージャー、嘘泣きバレバレ!!」
2人で笑いながら、つかの間の休憩であるお茶で乾杯をした。
それを一気に飲み干した本多聞マネージャーはコップを洗いながら顔だけを私の方に向けた。
「そうそう細井さん、
志崎(シザキ)百貨店って知ってるよね?」
本多聞マネージャーの問いに、私は即答で首を縦に振った。
知らないはずがない。
志崎百貨店とは今一番人気で大きな百貨店だ。
小学生でも知ってるくらい。
その志崎百貨店は今最も勢力のあるグループで
ゴルフ場経験や株、今年リーグ優勝した野球チームのメインオフィシャルスポンサーなど様々な事業を展開している。
しかし、それがどうしたんだろうか。
本多聞マネージャーの問いに私の頭は途端にはてなマークでいっぱいになった。
「その志崎百貨店の社長が今日7時に個室予約してるんだ。
志崎社長はね、クレーマーでもなければ変態オヤジでもなく、
むしろとても紳士的でいい人なんだ」
「えぇ、そうですか。
それがどうかしたんですか?」
本多聞マネージャーの言いたい事が伝わってこない。
「本当に紳士的な人なんだけどね、大の美人好きなんだ」
「……は?」
本多聞マネージャーの発言には、私は眉をひそめるしかなかった。