誘惑上等!
怒られると思っていたのに、理沙はかぁっと顔を紅潮させ、ただただ恥ずかしそうに、そして悔しそうに下唇を噛み締める。
----------やべ。まじかわいいし。
普段は理沙から叱られるのが好きなのに。ことに恋愛に関しては自分が理沙をいじめてみるのがたのしい。
キスやスキンシップに不慣れな理沙に気付いていないフリをして、わざと不遠慮に体に触れてみたり、容赦なくキスしてみたり、ちょっとエッチなことを話題にしてみたり。すると理沙はいつも戸惑うような恥じるような反応をした。それがたまらなかった。
「悪かったね。……お察しどおり、どうせわたしは25歳の面倒臭い処女ですよっ」
理沙は吐き捨てるように言うと、素早く布団の中にもぐりこんでしまう。
「ちょ、隠れることねーだろ」
呼びかけるとますます深くもぐってしまう。これでは大悟お気に入りのかわいい丸顔を見ることも出来ない。
「理沙ちゃんってば。頼むから自己完結すんなって。俺、面倒臭いなんて思ってねぇし」
理沙は布団の中から「嘘つき」と言ってくる。
「……いっつもわたしになんて興味なさそうな顔してるくせに……」
---------アホか!
そんなんポーズに決まってんだろ、とあともうすこしで口に出してしまいそうだった。
妄想の中の自分はすでに理沙とセックス三昧の爛れた生活を送っていたし、理沙のアパートを訪ねるたびにあやうくそれを現実にしてしまいそうな衝動に何度も負けそうになっていた。
でもただでさえ理沙には子供扱いされることがあるのに、「やりたいだけの盛ったガキ」だとは死んでも思われたくなかったから。
理沙と同じ歳くらいの男だったらきっともっと余裕があるんだろうなと想像の中の社会人男にライバル心を燃やし、意地でも「勢いだけでヤらない」と決意していた。
その意地を貫き通すために、この一ヶ月はすぐに触れることが出来る距離にいるというのに理沙を襲いたいという衝動を抑え続け、大好きなカノジョに会っているというのに苦行みたいな気分を味わっていた。
そんな思いをしてまで、大事にしたいと思っていた。すぐに手を出さないことで自分なりの本気を表明していたつもりだった。
なのに大事にしていたカノジョは、いじけたように言う。
「……ほんとは引いてるんでしょ。25歳にもなって経験がない女なんて」