誘惑上等!
理沙から彼女が愛用しているコロンのいい匂いがするのはいつものことだけど。今日彼女から漂ってくるのは、湯上りのせっけんみたいなさわやかな香りではなかった。
花片を広げて可憐に咲き零れる、うつくしい時期を迎えた花のような。
蜜のように濃厚で瑞々しい果汁を滴らせる、食べ頃の果実のような。
ひと呼吸するだけで胸がざわついてしまうほどやさしいのに、思わずごくりと喉が鳴りそうなくらいにおいしそうでもある。
衝動的に理沙の肌に自分の鼻先を押し当てて、彼女の体のどこかにある匂いのありかを探り当てたくなる。そんなどうしようもなく胸を疼かせる甘い匂いがする。
気付いたときには理沙の唇を奪っていた。
いままでにもキスならしたことはあったけれど、激しさのあまりに自然に2人ともベッドに沈み込むよな荒々しいキスなんてしたことがなかった。
抵抗しない理沙をそれでもベッドに押さえつけて、忙しく角度を変えながら舌を絡ませていく。舌と舌の粘膜同士が深く触れあい、離れていくときのくちゅくちゅという水音がアパートの部屋に響く。
セックスの最中を連想させられるその湿った音に煽られて、ますますねっとりと理沙の口内を犯していく。
-----------なんのために今まで我慢してきたんだよ。
脳裏にはそう説教してくる自分がいる。ここでやめたほうがいいと思うのに。
自分の体の下に感じる理沙の生々しいまでの体温と、そのやわらかな肢体から漂うくらくらと酔わせるような官能的な甘い匂いが大悟から理性を奪い去っていく。
理沙は大好きな相手で、自分のカノジョで。
今までだって、理沙が女の子であることなんて、言うまでもなく知っていたことだ。なのに。こんなに甘い匂いをされると、隣にいるひとが、まぎれもない「女」であることを改めて意識させられる。
そして自分も彼女に欲情する「男」という生き物であることをはっきり認識させられる。
そんな本能に訴えてくるような匂いなのだ。