Goodbye My Baby
数秒待って、優哉が出てきた。

心なしか、表情が硬い。




「おぅ・・・入れよ」

「う、うん!」



きちんとした家だな、と思った。



両親と、4つ上の姉。

ごく普通の家族構成の中、ごく普通に育った優哉。


そんな優哉が住むのに、よく似合う家。

普通で、心地よい家。




「お邪魔しまーす・・・」

「いいよ、俺しかいないんだし」


軽く優哉が笑った。




そ、そうだよ・・・ね・・・

うん・・・



靴を脱ぎ、優哉の部屋まで上がった。



綺麗に整頓されていた。



カーテンは、トーンオントートのチェック。

ベッドは、ごくシンプルな木製。

机と棚には、優哉の好きなバンドのCDや、『テニス上達への道』と書かれた本なんかが並べられている。

テニスラケットは、整備用の道具と一緒に壁に掛けられていた。



「きれいにしてるんだね」

「桜が来るから片付けたんだよ」



硬い表情のまま、優哉が笑う。



優哉が入れてくれたコーヒーは、あったかくておいしかった。

マグカップに手を添えて、こくんと飲む。


ふと、優哉と目が合う。



なんだか、時間が止まったみたいで、息苦しくなった。




優哉が、私のあごに手を寄せて、キスをした。

びっくりするくらい大人なキスだった。

< 12 / 53 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop