滅びの彼方
今日は無理かと諦めていたのに、まさに幸運。
実際にはこの憲兵がいたから、と言うのが主な理由だが…憲兵さえこちらに来てくれればもは怖いものなどない。
だがそれだけにとどまらず、この憲兵はどうやら私を国内に入れてくれるつもりらしい。
彼は躊躇うことなく城門の隣、小さな鉄扉の鍵を開け…どうぞと誘導する。
ごくりと息を呑んだ。
唐突に良心と忠誠心が火花を散らした。
ほんの一瞬の出来事だった。
それでも、私を迷いの淵に立たせるには充分な時間だった。
入国した途端、私の目的は本格的なものとなる。
少しでしい。
私を疑い、はねのけてほしいと、正直どこかで思っている自分がいた…しかし。
憲兵の瞳は私を疑わなかった。