滅びの彼方
私は鉄扉をくぐった。
と同時に、かなり強い磯の香りが体を覆う。
――波の音と、潮風。
暗闇が深すぎてはっきりとは見えないが、海が近いのだろうか。
街灯も無く、頼りなのは月の光だけ。
街らしき光は見えず、私たち以外に人の気配すらしない。
ここは…真っ暗な世界だ。
これが―デヴァーデン…?
「――驚かれました?…ここは貴方の国とは大層違うでしょう。」
憲兵は静かに言う。
「…ええ、少し…まさかこんな……、」
こんな…何もない所だとは思っていなかった――。
だが言い終わる前に、言いようもない緊張が全身に走る。