滅びの彼方

私は鉄扉をくぐった。

と同時に、かなり強い磯の香りが体を覆う。



――波の音と、潮風。

暗闇が深すぎてはっきりとは見えないが、海が近いのだろうか。


街灯も無く、頼りなのは月の光だけ。

街らしき光は見えず、私たち以外に人の気配すらしない。

ここは…真っ暗な世界だ。


これが―デヴァーデン…?




「――驚かれました?…ここは貴方の国とは大層違うでしょう。」



憲兵は静かに言う。



「…ええ、少し…まさかこんな……、」



こんな…何もない所だとは思っていなかった――。


だが言い終わる前に、言いようもない緊張が全身に走る。


< 11 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop