滅びの彼方
ザッ、と自分の上に暗闇が突然影を落とした。
「―――、」
獣かと慌てて銃に手を伸ばし、構え、引き金に指をかけ…歯を食いしばり、顔を上げた。
「…、!?」
目、耳、鼻、口。
独特な帽子を深くかぶっているせいで顔はよく見えないものの、目に飛び込んできたのは間違いなく、自分と同じ人の顔。
「…あの、大丈夫ですか?」
そう私に声をかけるこの人物の服装が分かった瞬間、城門を守っていたあの憲兵だという事に気が付いた。
幸か不幸か…。
思いがけない出会いにどうしていいか分からず、私は咄嗟に、
「ち、ちょっと…道に迷ってしまって…」
苦しい嘘をつく。