滅びの彼方
すると疑うことなく、憲兵は手元のランプに火を灯し、私の手を取って優しく微笑んだ。
「そうでしたか。お怪我はないですか?」
優しく低いその声に、久々に自分の性別を思い出せたような気がした。
なんとなく罪悪感を覚えながらも数度頷き、少し頬が熱くなるのを感じながら、ゆっくりと立ち上がる。
それから憲兵はランプの明かりを足元にかざして私に歩けるか確認した後、自らも足を進めた。
「もう直に夜になります。ここは獣が多く危険ですから。」
「…やはり、獣がいるのですね。」
「ご覧のとおり隣が森なので。でもこの城壁があれば何の心配もいりませんよ。」
そんな会話をしながら、城壁沿いに暫く歩く事数分。
なんと、つい先ほどまで近寄る事さえできなかった城門の前まで簡単に着いてしまった。