お向かいさんに恋をして
「ただ……」の後の言葉も「ゆかりさん」の存在も、未だに分からない。

秋中さんとは、時々廊下や近所で偶然遭遇して挨拶をしたり、たまに駅まで一緒に歩いたり。

……つまり、なにも進展していない。

留奈さんもきなこちゃんも
「奥手すぎだから」
「たまには行動しなきゃ!」
と、呆れつつも応援してくれている。

「わぁ! フィナーレかなっ!」

「きっとそうだよ~!」

2人は目の前で花火にはしゃいでいる。

だけど私の目に映っていたのは、あの日の桜を眺める秋中さんの横顔だった。

大好きなのに、なにも行動に移せない自分が歯がゆい……。

花火が終わっていつものように片付けを手伝い、おばあさんにお礼を言って家を出た。
きなこちゃんは今日は泊まることなく手を振って帰っていった。
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