お向かいさんに恋をして
「さくらちゃん、大丈夫?!」

昨夜のことを気にかけてくれているのだろう。
留奈さんは入って来るなり私の手をぎゅっと握った。

「だ、大丈夫、です……」

心配そうな留奈さんを安心させようと笑顔を浮かべてみるも、上手くいかなかった。

「あ、やっぱり大丈夫じゃ、ない……」

私は留奈さんに抱きついて泣きじゃくった。

「さ、さくらちゃんっ! とりあえず座ろうか? ねっ?」

留奈さんは私を支えて座らせた。
ローテーブル前の私の定位置だ。

いつもなら向かいに座っている留奈さんが、手を握ったまま隣にいてくれた。

「ちょっと待ってて」

言って私の手を離した留奈さんは、勝手に冷蔵庫を開けてお茶を入れた。

「さ、これでも飲んで落ち着いて」

って、留奈さん。
私のお茶なんですけど……。
って、もう良いか。
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