お向かいさんに恋をして
狙っても入らないと思うし、いっそのこと思いっきり投げてみようかな。

「せーのっ!」
「あっ! さくらちゃ……!」

力一杯腕を振り上げた時だった。

「おっ? とと」

えっ……?
今、何かに当たった……?

おそるおそる振り上げた腕の方を見上げると、輪を持った拳が男性の肩に当たってしまっていた。

「ご、ごめんなさいっ」

慌てて腕を引っ込めて向き直り、男性に深々と頭を下げる。

足元を見つめていると、たこ焼きとドリンクのカップとビニール袋が散らばっていることに気がついた。

私ったら、なんてこと……。

わざとじゃないとは言え、いきなり知らない人を殴った挙げ句、食べ物までダメにしちゃうなんて……。
< 143 / 226 >

この作品をシェア

pagetop