お向かいさんに恋をして
……って、凹む前にやることやらなくちゃっ!
慌てて屈み、それらを集めて袋に詰めた。

「本当にごめんなさいっ! 
すぐに同じもの買ってきますっ!」

立ち上がってもう一度頭を下げる。

「あ、いや、大丈夫だよ。
僕もボーッと歩いてたしね。
気にしないで?」

頭の上から柔らかく優しい声が聴こえる。

この声……!

聞き間違えるはずがない。

「あ、秋中さんっ……」

頭をあげると、少し驚いた顔の秋中さんと目が合った。

顔を上げたら秋中さんって、出会った初日の時みたい。

普段の私なら偶然に秋中さんに会えると、奇跡だ、運命だ、ラッキー! ってはしゃいでたとこだけど、今は素直に喜べない。

あの日の酔っぱらいキスが一瞬にして脳裏に浮かんでモヤモヤした。
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